富士山噴火で火山灰が広範囲に降り注ぐと、送電設備（鉄塔、電線、変電所）にさまざまな影響が想定されます。

特に「灰＋雨（水分）」の組み合わせは送電設備に深刻な問題を引き起こします。以下に整理してみました。

🔹 火山灰と送電設備への影響

1. 絶縁性能の低下

   • 火山灰は細かい鉱物粒子で、乾燥状態なら絶縁体に近いですが、湿ると導電性を持ちます。

   • 雨や霧で灰が湿ると、送電線や碍子（がいし＝絶縁器具）に灰が付着し、表面リーク電流が流れやすくなります。

   • その結果、フラッシオーバ（絶縁破壊）による短絡事故が発生する恐れがあります。

2. 設備への物理的影響

   • 火山灰は重く、厚く積もると送電線に「雪害」と同じように過大荷重を与え、断線や倒壊のリスクが高まります。

   • 変電所機器や開閉器の動作不良も発生しやすくなります。

3. 送電障害の拡大

   • 局所的な漏電・短絡が大規模停電に波及する可能性があります。

   • 特に首都圏（東電管内）は富士山からの降灰リスクが大きいため、電力供給網の機能停止が社会的に大きな影響を及ぼします。

🔹 雨と組み合わさった場合の危険性

• 灰が付着 → 雨で湿潤 → 導電路が形成され、碍子表面を通じて漏電。

• このとき、電圧が高い送電網では絶縁破壊が一気に起こる可能性大。

• 灰と雨が泥状になり、碍子を洗浄するどころかより強固な導電層となることがあります。

🔹 対策（電力会社が検討・準備していること）

• 碍子の洗浄（活線洗浄）：高圧水やブラシで付着灰を除去。

• 設計の工夫：灰が堆積しにくい碍子形状の採用。

• 系統冗長化：一部の送電線が使えなくても、迂回送電できる仕組み。

• 緊急遮断・復旧訓練：火山灰リスクを想定したマニュアル整備。

✅ まとめると
富士山噴火で灰が送電設備に付着し、さらに雨が降ると「絶縁性能低下 → 漏電・短絡 → 大規模停電」というリスクが高まります。
電力会社はある程度対策を取っていますが、降灰量や気象条件によっては 首都圏で長期停電 の可能性も排除できません。

＊海外の事例と照らし合わせつつ、富士山噴火時に日本で起こり得る送電網被害シナリオを整理してみます。

🔹 海外の事例

1. フィリピン・ピナトゥボ火山噴火（1991年）

• 大規模な火山灰降下により送電線や変電所が灰で覆われる。

• 特に雨季で湿った灰が導電性を持ち、碍子の表面フラッシオーバが多発。

• 広域停電が発生し、首都マニラでも電力供給が不安定化。

　　＊復旧には灰の除去作業が必要で、時間と労力を要した。

2. アイスランド・エイヤフィヤトラヨークトル火山噴火（2010年）

• 欧州では航空網への影響が注目されたが、アイスランド国内では送電網も被害。

• 火山灰が湿って碍子を汚染 → リーク電流 → 地方都市で送電障害。

• 地域的停電は数時間から数日に及んだ。

　＊電力需要が分散されていたため大規模停電には至らなかったが、寒冷地では停電が直接
「生活インフラ危機」につながった。

●日本（富士山噴火）の想定シナリオ

１．首都圏への降灰

• 気象庁のシミュレーションでは、風向き次第で 東京23区を含む首都圏に数 cm〜十数 cm の降灰があり得る。

• 数 mmでも送電線や変電所の碍子に付着すれば、雨天時に漏電リスクが顕著。

　　＊首都圏広域停電（数百万世帯規模） の可能性。

2. 送電設備の物理的被害

• 灰が湿って重くなる → 電線に着雪のように付着 → 断線や鉄塔倒壊の恐れ。

　＊送電線ルートが富士山東側を経由して首都圏へ繋がっているため、中枢インフラの
一部が寸断されるリスク大。

3. 変電所・発電所の機能低下

• 変電所の開閉器や絶縁機器に灰が堆積 → 操作不良や短絡事故。

• 灰と雨で泥状になり、冷却系統や換気設備が詰まる可能性。

　＊東京湾岸のガス火力発電所にも灰が到達すれば、供給能力低下が懸念される。

4. 停電の波及と復旧困難

• 停電が長期化すれば、通信・交通・医療・上下水道・金融システムに連鎖的影響。

　＊灰が広範囲に及ぶため、清掃や復旧作業が容易ではなく、数週間単位で断続的停電が
想定される。

🔹 比較と特徴

• フィリピンのピナトゥボ火山噴火：降灰と雨による「碍子フラッシオーバ停電」が顕著。

• アイスランド噴火：寒冷地特有の「湿った灰による短絡停電」。

• 富士山噴火（想定）：

  • 首都圏という「人口・インフラが世界一集中した地域」で発生。

  • 一度の停電で 数千万〜数億人に近い規模の社会的影響。

  • 送電網だけでなく、都市機能全体の麻痺に直結。

✅ まとめると
海外でも「灰＋雨＝送電障害」は実際に起きている。
日本で富士山が噴火すれば、首都圏における大規模停電・復旧の長期化が最も深刻なシナリオです。

●それでは、富士山噴火による降灰＋停電長期化シナリオを前提に、家庭・企業が備えるべき
実用的なリスクマニュアルを整理します。

🔹 停電対策リスクマニュアル

1. 電源確保

＜家庭向け＞

• モバイルバッテリー：スマホ2〜3回充電できるものを複数用意。

• ポータブル電源（蓄電池）：冷蔵庫や通信機器の短時間稼働に有効。

• ソーラーパネル簡易充電器：長期停電に備え、日中の充電源として活用。

　　＊乾電池式ラジオ・LEDライト：通信と照明の確保。

＜企業向け＞

• 自家発電機（ディーゼル・ガス）：業務継続計画（BCP）の要。

• 燃料備蓄：72時間〜1週間分を目安に。給油契約も事前に確認。

　＊UPS（無停電電源装置）：サーバーや通信機器の安全停止・短時間稼働用。

２．水・生活インフラ

＜家庭向け＞

• 飲料水：1人あたり1日3L × 最低7日分。

• 生活用水：トイレ・洗浄用に風呂へ水を溜めておく。

• 非常食：調理不要（缶詰、レトルト、クラッカー）。

　＊カセットコンロ＋ガスボンベ：電気がなくても調理可能。

　＜企業向け＞

• 非常用給水タンク・浄水器：従業員分を数日分確保。

• 簡易トイレ（凝固剤タイプ）：下水ポンプ停止に備える。

　＊食料備蓄：従業員の在宅困難時に備えて3日分以上。

３．通信確保

　＜家庭向け＞

• 携帯ラジオ：停電時も情報収集可能。

• モバイルWi-Fi・予備SIM：メイン回線がダウンしても通信を確保。

　＊SNS・防災アプリ：災害時に情報収集・安否確認に活用。

　＜企業向け＞

• 衛星電話・IP無線：携帯網が停止しても通信を維持。

• 複数回線冗長化（光回線＋携帯＋衛星など）。

　＊安否確認システム：従業員・取引先への一斉連絡手段を確立。

４.灰への備へ

• 防塵マスク（N95規格推奨）・ゴーグル：火山灰は微細で肺や目に有害。

• ブルーシート：灰が積もるのを防ぎ、雨樋・給水口への侵入を軽減。

　　＊掃除用具（ほうき・シャベル）：電気不要で灰を除去できる装備。

５．情報と訓練

• 家族・社員で「停電時の行動ルール」を共有。

• 災害用伝言ダイヤル（171）やLINE災害通知の利用方法を確認。

   ＊企業は BCP（事業継続計画） を策定し、年1回は訓練。
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[まとめ]

• 電源：モバイルバッテリー・発電機・蓄電池で多層防御。

• 水・食料：家庭は1週間、企業は最低3日分以上備蓄。

• 通信：ラジオ・モバイル・衛星の多重化。

• 灰対策：マスク・ゴーグル・掃除用具で健康被害と設備被害を軽減。

   ＊訓練と共有：準備しても使えなければ意味がない。定期的な確認が重要。

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[終わりに]
昨今、東海・東南海地震などの発生確率が高くなってきたり、富士山噴火のリスクも気になってきたり、少し想像すると不安になりますが、事前に備えを整理しておいて安心につながるようにしたいですね。